ACOUSTAT MODEL3 SLIMLINE レストア その弐
 
 何とか無事二枚に分離し、始めてその内側を見ました。

 これがフィルムに塗られている導電剤の様子です。 全面ではなく、周辺を残して塗られています。

 

 しかも、高圧の給電は、周囲全体からではなく、一点のみからです。 一寸判りにくいのですが、フレームの方に一か所だけ出っ張って塗られた導電剤の中央に、給電線のバラケた先端が見えています。 ウーーム、こんな方法ですか。



 導電剤は、どう見てもスプレーとかコーターによる機械塗りではなく、手作業の感じです。 またまたウーーム、です。 こんなもんでいいのですね。 というか、手塗りで均一に塗れるのでしょうか。 均一に塗らないと、場所によって効率(振幅すなわち音圧)が異なってしまいますし、場合によっては、濃いいところで放電が起きてしまいます。 ちなみに、導通抵抗を測ってみたところ、ものすごく小さな値でした。 高圧発生回路の終端に直列に入っている500MΩという、とてつもなく高い抵抗値と何か関係があるような気がします。 

 写真のとおり、フィルムに一部しわが発生していますが、全体の程度は良く、剥がすのをためらうほどでした。しかし、剥がさないと始まらないので剥がしました。 フィルムの感触ですが、厚みと硬さを感じました。 厚みが気になったので調べてみましたら、16.5μmのものが使われている、という情報がありました。 触った感じではそこまでは厚くはない感じでしたが、この厚みと導電剤の重みがACOUSTATの音の厚みと低域の量感に関係しているような気がした一方、トランジェントに影響はないのかな、という気もしました。 

 ユニットの内側の写真です。


ユニット上下端の信号線は、少しフイルムから離れる方向に曲げられています。 フィルムの四周には導電剤が塗られていませんので、四周に信号を入れる意味はないということなのでしょうが、上下端は、念のため、線を遠ざけている、ということなのでしょう。














信号線の貼り付け方です。
接着剤を塗った上に線を置いた、というより、線を置いた上から接着剤を線状に流し、線の上にはみ出た余分な接着剤を拭き取った、という感じに見えます。 それにしても、接着剤が固まるまでの間、線とフレームの密着の保持はどうやったのでしょうか。線が少しでも浮いたら、そこで放電が起きてしまいます。 接着剤が効かない素材の板でも乗せておいたのでしょうか。 そうは見えないのですが・・・











フィルムを剥がして、二枚になったユニットの内側の外周 ( 枠 ) を調べてみますと、あまり平面性は良くありません。 特に四隅の枠の合わせ目は、かなり段差があります。(写真右上の黄土色の部分は枠自体が変色したような感じで、接着剤の残りカスが付いているわけではありません。) ウーーン、結構ラフなんですね。 QUAD も STAX もそうなんですが、それほど精密な造りではありません。だからといって、全ていい加減という訳でもなく、妙に敏感で微妙で、精密なところもあります。

兎に角、これ基本的な構造は理解できたので、これからどのような方法を採るのか考えながら、枠の表面を平らにする作業をしました。

フィルムを剥がした面には接着剤が残っています。 どんな接着剤が使われているのか、見当が付きませんでした。 透明な樹脂系で、完全な硬化型ではないようですが、弾性は殆どありません。 ここに何が使われていても、私はエポキシを使うのでどうでもいいのですが、枠の素材がテフロンだとしたらエポキシは効きませんので、考えながら作業を進めました。 枠の素材を特定すべく、角を少し削って燃やしてみたのですが、どうもよく判別できなかたので、エポキシ接着剤を塗って実験した結果、しっかり接着できたので、まあよしとしました。

次はフィルムを貼るための木枠の製作です。 兎に角長いので、フィルムにテンションを掛けたとき枠が歪んでしまわないよう、中央に桟を入れました。 木枠にフィルムを張った様子と、それをユニットに貼った状態が次の二枚です。

兎に角長い・・・・・





作業をしながら色々と考えるのですが、その中で一つ思ったのは、MODEL3 も、今手掛けている MODEL3 SLIMLINE も、ユニット構成は同じなんじゃないかな・・・・ということ。 今までは、MODEL3 はユニットが六枚じゃないのかな・・・なんせあの大きさだし・・・・と思っていました。  ACOUSTAT はユニットの枚数がモデル名だし、違いは、ただバッフルの面積だけなんじゃないかと・・・・


 今回はこの辺で・・・

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